新幹線南びわ湖駅は本当に不必要だったのか?



1.南びわこ駅とは

 2006年5月に着工された事で、メディアに盛んに取り上げるようになり、その年の7月に滋賀県知事選挙で必要か否かが最大の焦点となった南びわ湖駅は県知事に当選した嘉田由紀子氏によって、2007年10月に工事が凍結されることとなりました。

 しかし、本当にこの駅はただの無駄な駅だったのでしようか。まずは、この駅についてはもう一度おさらいしてみましょう。

 南びわ湖駅は滋賀県栗東市に建設予定だった東海道新幹線の新駅です。滋賀県には東海道新幹線が北東部から南西部まで貫いていますが、駅は県北東部の米原市にある米原駅だけで県南部は新幹線の利便性を享受できていませんでした。また、米原〜京都駅間は駅間平均距離が約34qの東海道新幹線において最も駅間距離が長い区間であり、約68qもあります。これらのことから、県南部に新幹線新駅をつくる構想が東海道新幹線開通直後から持ち上がっていました。

 そして、1996年に栗東市の新幹線とJR草津線との交差場所付近に新駅の設置を要望することにし、新駅名を仮称「びわこ栗東駅」としました。その後仮称を「南びわ湖駅」に変更し、2006年5月に新駅を着工しました。当初から新駅の必要性が疑問視されていたためこの頃マスコミが盛んに新駅について報じられるようになりました。その年の7月の滋賀県知事選挙で新駅建設凍結を公約に掲げた嘉田由紀子氏が建設推進派の現職を破って当選すると、その後の滋賀県議会選、栗東市長選、市議会選、でも建設推進派が劣勢となりました。その後も様々な出来事が起こったものの2007年10月には建設は凍結されました。

2.建設反対派の主張

 さて、この駅の建設が凍結されたのはなぜでしょうか。第一には、建設費が高いことが挙げられます。この駅は地方自治体がJRに駅の設置を要望する「請願駅」と言われるものです。請願駅の場合建設費は原則として、全額自治体負担となります(完成後の維持費等はJRが負担します)。南びわ湖駅の建設費は約240億円でそのほとんど全ては自治体負担です。今までは東海道新幹線には請願駅が4つ建設されましたが、最も高い掛川駅でも135億円であり、南びわこ駅の建設費は以上に高くなっています。その理由は駅設置予定地が盛り土の区間であり、これを高架橋にした上で新駅を建設するため。一旦仮線を設置する必要があるからです。

 第二には立地条件の問題です。駅設置予定地はJR草津線の新駅と接続する予定ですが、その駅から新幹線新駅の改札までに約400m歩く必要があり、乗り換え時間が多くかかります。県側は「その距離はとても長いので動く歩道を設置する。」と言っていましたが、動く歩道は直線にしか進めないので、場所の確保が出来るかどうかは分かりません。そして、なにより、滋賀県の鉄道の大動脈であるJR琵琶湖線(東海道本線)と接続しないため、琵琶湖線沿線の新幹線利用者は米原駅か京都駅を利用するほうが便利です。なおかつ京都駅は全ての新幹線の列車が停車するため利便性が高く、南びわ湖駅近くの草津駅、栗東駅からも新快速を使うことで15〜25分程でいくことができます。そのため、南びわ湖駅の利便性を享受できるのは、草津線沿線の湖南氏、甲賀市域と狭い地域と言われています。

 以上により、駅建設に高額な投資をしたところでそれを超える経済効果が期待できない、というのが反対派の主張なのです。

3.建設推進派の主張

 では、この駅の利点は何でしょう。先程と矛盾するようですが、第一には立地のよさです。新駅は鉄道アクセスについては悪いものの道路交通に関しては抜群の立地条件にあります。なぜなら、名神高速道路の栗東第二インターチェンジーと国道1・8号が交わる道路交通の要衝が新駅設置予定地の1qも離れていない場所にあるからです。

 また、新駅付近には大学や美術館、図書館が集まる文化ゾーンと呼ばれる場所があり、その上大阪や京都駅への通勤客の住宅の建設が進み、人口増加率0.6%で第3位(2005〜06年)の滋賀県の中でも特に人口の増えている地域でもあります。このことから新駅がこの地域の活力をさらに高めるものと考えられています。

 また、新駅設置は琵琶湖や忍者・焼き物の里として知られる甲賀地域への観光客の利便性の向上、そして、観光客数の増加が期待されます。

 以上が新駅は県南部地域の発展に欠かせないものであるであるというのが推進派の主張です。

4.新駅は必要か否か

 これらのことから、新駅が必要か否かは昔から議論があったわけですが、結局のところ新駅は必要なのでしょうか。

 一般的に見れば、いくら新幹線の駅といえども、あれだけ高額な税金をある地域のために重点投入するのは腑に落ちないでしょう。また、駅を造ったところで現状のダイヤを見る限り、ひかりとこだまが1時間に1本ずつしかとまらないと思われ、近くの京都駅に行ったほうが便利だと思うでしょう。だから、新駅なんて絶対必要無いと。

 しかし、私は財政状況さえ良ければ造っても良いと思います。なぜなら、道路交通が整っている場所に新幹線の駅を設置するのは、地方においての工場、誘致するには便利だと思われます。物の輸送は高速道路で人の移動は新幹線を使えば、大阪、名古屋、そして東京に容易に出られます。新駅前に大規模無料駐車場を造れば、わざわざ駐車場の少ない近くの駅に行って京都駅に出るよりも便利だと思われます。インターチェンジーの近くに新幹線の駅を設置するのは、以前にもある例で、燕三条駅、岐阜羽島駅などがあり、将来北陸新幹線にも他の鉄道との接続が無く、インターチェンジーが近くにある場所での駅建設が予定されています。また、滋賀県は100世帯あたりの乗用車保有台数が149.6台と全国の中でも多部類に入るため、大規模駐車場建設によって新駅の利便性は大きく向上すると思われます。

 観光についてはどうでしょう。皆さんは大阪から新幹線を使って信州方面に行く団体ツアーで、新幹線をどこで降りて、バスに乗り換えるか知っていますか。それは名古屋ではなく、先程インターチェンジーに近い駅と書いた岐阜羽島です。岐阜羽島は岐阜市、大垣市から離れた場所に立地し、開業時は政治的だと揶揄されましたが、インターチェンジーに近いことを生かして大規模駐車場を整備して、一定の成功を収めています。

 びわ湖南駅は、琵琶湖、陶芸の里信楽、忍者の里伊賀甲賀、そして新名神高速を使えば伊勢志摩も近いです。団体ツアーの場合、新幹線にひかりを使うことが多いので、ひかり、こだままでしか止まらないネックもあまり問題にはなりません。また、外国からの観光客もひかり利用者が多いので問題にはありません。なぜなら、外国人観光客向けに販売される「JAPAN RAEL PASS」(JR乗り放題キップ)ではのぞみが利用できないからです。また、伊賀甲賀では意外と外国人観光客を見かけます。

 しかし、国内の団体旅行は最近低調です。そのため、今後のことを考えると、南びわ湖駅をターミナルとして、各名所へ行く路線バスを整備したほうがいいかもしれません。

 ちなみに、ひかりはのぞみよりかなり遅いと思われがちですが、所用時間を比べるとそんなに見劣りしません。例えば京都〜東京間でのぞみと南びわ湖にとまるであろうひかりとで比べた場合前者は、約2時間20分、後者は2時間40分という健闘ぶりです。

5.まとめ

 南びわ湖駅についてはやり方次第では滋賀県にとって大きな利益を上げることはできると思います。すなわち、新駅を造るだけで何もしないというのは税金の無駄になりますが、住民、観光客にとって魅力的な街づくりをしていけば、投資額に見合った見返りは生まれてくると思います。


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